世界で4番目に大きな島マダガスカル。

 この広大な国土を移動するためには、飛行機の利用が便利
である。
 しかし、実際は飛行機の本数は少なく、利用しているのは観
光客がほとんどである。

 それではその他の移動手段は何があるかというと、乗り合い
タクシーがある。マダガスカルの人々は、「タクシー・ブルース」
とよんでいる。ブルースというのは、「へき地」という意味があり、
地方の都市や町と結んでいることを意味するようである。
 もちろんタクシー・ブルースは、マダガスカルだけでなく、アフリ
カの国々にも存在するが、実際に利用してみたマダガスカルを
もとに紹介する。
 
 タクシー・ブルースは、様々なタイプがある。
 一般にはミニバンを使用しているが、場所や区間によっては
ミニバスのようなものを使用したり、カミヨンとよばれるトラック
の後ろに大きな箱で作られた座席を乗せたものを使用したりしている。また、アンタナナリボと東部の都市タマダヴを結ぶものの中には、大型バスを使用しているものもある。
 大型バスは除いて、ほとんどのタクシー・ブルースは、車の屋根の上に荷物を乗せ、ビニールシートでくるんでロープで縛る。荷物が落ちるかもしれないと不安になる心配はない。マダガスカルの人々は、食材や日用品、時には家具や自転車といったものまで乗せてくるが、断られることはないようである。
 また、車の前方上部には、行先や区間、タクシー・ブルースの会社名などを掲げているので、どれがタクシー・ブルースか見分けるのはそんなに難しくないようである。

 タクシー・ブルースの乗り方であるが、アンタナナリボなどの大都市では、乗り場がいくつかあり、乗り場を探さないといけない。地方の都市や村に行けば、中心部にタクシー・ブルースの乗り場がある。
 そこに行けば、バスのオフィスがある。といっても、木造の小さな小屋のようなものがほとんどである。
 そこでチケットを買う。タクシー・ブルースは定員制である。また、座席も指定することができる。いちばんのおすすめ場所は、助手席の窓側である。(いっぽうで最後まで残るのは助手席と運転席の間の席である。)
 座席を指定すると、ノートに書かれた座席の枠に名前が書かれる。そして、その枠がすべて埋まれば出発するのである。
 本数が多い区間はそんなに待つことはないが、本数が少なかったり、長距離を走ったりする区間は、前日予約などができるようである。

 さて、いよいよ乗車である。実際乗ったアンタナナリボ発タマダヴ行きのタクシー・ブルースで紹介する。
 満員になったので出発をする。乗客は、助手席2人、その後ろに3人、4人、4人、4人、そして最後尾に4人が乗った。(数えてみたら21人であった。)
 タクシー・ブルースが出発すると、まず軽油を入れる。日本と違い満タンに入れるのではなく、必要な量だけ入れるようである。聞いた話であるが、長距離を走る場合はポリタンクに予備の軽油を入れて走るようである。
 タクシー・ブルースは快調に走って行く。しかし、山岳部などの坂道に入ると速度が遅くなる。また、実際には乗っていないが、未舗装の道路になると、さらに速度が落ちるようである。
 途中の町で休憩をしたり、場合によっては町ではないところで休憩をしたりしながらタクシー・ブルースは走って行った。
 このタクシー・ブルースは満員なので、途中で乗客が降りない限り、新たな乗客を乗せることはない。そのため、休憩以外にほとんど停車することはなかった。

 ぼくは、途中のペリネ国立公園で下車をすることになっていたが、降りる場所をきちんと伝えているのでその場所で降ろしてもらった。しかし、料金はタマダヴまでの値段であった。区間料金があるのかどうかは分からなかった。

 ペリネ国立公園からの帰りは、村や町ごとのタクシー・ブルースに乗ってみた。
 まずは、ペリネ国立公園の村、アンダシベから大きな町であるムラマンガまでである。アンダシベは1000人ほどの小さな村であった。1時間に1本しかタクシー・ブルースは出ないようであった。
 やっと出発するが、のろのろと運転し、どこともなく手を挙げた人たちを乗せていく。まさに各駅停車であった。
 結局、30分で走った往路と違い、復路は1時間30分もかかってしまった。
 次に、ムラマンガからアンタナナリボまでである。ムラマンガのタクシー・ブルース乗り場に着くと、さっそく声をかけられオフィスに連れて行かれた。すぐに出発するタクシー・ブルースがあったが、助手席の窓側に座りたかったので、1本後のタクシー・ブルースに乗ることにした。ノートの枠に名前が書かれ、座席は指定された。
 しかし、乗客が集まり出発するまで、1時間もかかってしまった。それでも待つ時間としては妥当だと思った。
 さて、いよいよ出発すると、同じように軽油を入れた。そして、アンタナナリボへ向かって走り続けた。
 しかし、着いたのはタマダヴ行きのタクシー・ブルース乗り場とは別のところであった。やはり、区間と乗り場は別であるようだった。
 
 最後に、近郊区間のタクシー・ブルースを紹介する。
 実際に乗ったのは、アンタナナリボから空港に近いイヴァト村、キツネザルがいるレミューズ・パーク、世界遺産のあるアンボヒマンガである。
 これらはそれぞれ乗り場があり、そこから出発する。しかし、長距離のタクシー・ブルースと違い、ノートに名前を記入されることはない。近距離で乗客が多いからか、満員になった時点で出発する。そして、とにかく乗せられるだけ乗せるのである。たとえ立つことになってもである。また、補助いすはないので、座席と座席の間に1枚の板を置き、補助いす代わりにもしていた。
 
 以上が経験したタクシー・ブルースである。
 さらに長距離になると、かなり体力や気力を使う旅になりそうである。
 また、事故の危険もないとはいいきれないようである。
 しかし、現地の人々と旅や、その途中で見る景色は素晴らしいものがあるのも事実である。

 マダガスカルに行ってみた際には、一度経験してみてはいかかだろうか。
 

タ   ク   シ   ー   ・   ブ   ル   ー   ス